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言葉で聞かせて

第11章 記憶


次の日起きると隣に寝ていたはずの千秋さんは既に起きた後だった


「ん……ふぁ……」


ベッドの上で伸びをしてから身体を起こすと大きな欠伸が出る


身体中がまだ寝ていたい、と訴えてくるみたい

仕方ないかな
昨日久しぶりだったし

流石に疲れちゃった


もう一度出てきた欠伸を我慢せずにしていると、隣から微かな声が聞こえた


「……ぅ……ん……」


敦史、起きたかな


「おはよう」


僕が声をかけると薄っすら目を開けた敦史が千秋さんが寝ていた自分の横を一瞬確認してから僕を見て


「……はよ……」


と小さな声で呟いた

同じように伸びをして身体を起こした敦史はまだ頭が冴えないのかぼんやりしている


「……僕先にリビング行くね」


一応敦史の部屋だし、リビングで千秋さんが朝ごはん作ってくれているんだろうし、と僕は先に敦史の部屋から出た


記憶を無くしてからも前の自分がやっていたなら、と朝ごはんを作ってくれている千秋さんを思うと朝の気だるさも多少軽減される


リビングの扉をあげて中に入ると


あれ……


いつも漂ってくる朝ごはんの匂いがしない


「千秋さん?」


キッチンを覗いてみたけれど、そこには誰もいなかった

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