言葉で聞かせて
第12章 忘れられないこと
千秋からしたら迷惑な話だろうが散々千秋をからかって遊んでストレス発散した俺たちは仕事の支度をして家を出た
店に入って挨拶をしながら歩く
くっついてきた流を受け流しながら髪の毛をセット
よし
これでいいか
ホストになる前にはあんな髪型どうやって生成してんだ、と思っていたホストのする髪型は今となっては何の苦労もなく出来るようになった
もう一年経ったんだっけ?
ホストになってから
遠い昔にも昨日のようにも感じられる大学時代を思い出す
兄弟っていうと得意なものと不得意なものが違い、出来る方にコンプレックスを感じる、なんてことはよくある話だが俺たちにそんなことはなかった
悠史に出来ることで俺に出来ないことはほとんどなかったし、その逆も然りで性格の差以外の差は無いに等しかった
進学に興味のなかった俺は何も考えず、悠史に勧められるがまま同じ高校に入学して
大学は悠史に着いていっただけ
だから顔も学歴も生まれた家も同じ
小さい頃は天才双子、なんて囃し立てられたっけ
アホくさ
こみ上げてきたため息を何のためらいもなく空中に吐き出すと、いつの間にやら隣にいた悠史が小さく笑った
「どうしたの、敦史。今日思い悩んでるね。センチメンタル?」