言葉で聞かせて
第4章 飲み過ぎ注意
俺が頑張って起こしても伊勢さんは全く聞いてくれない
心の中で舌打ちしていると、伊勢さんがとんでもないことを言い出した
「お前らんちさぁ、どこ?」
「俺らんち?あー……えっと、ここからだと歩いて15分くらいっすかね?」
「泊めろ」
「は?」
「俺んち遠いんだよ。家帰んの面倒くせぇから、お前らんち泊めろ」
やべぇ
これは、墓穴か?
「いや、ちょっと……」
「……」
つーかこの人、もともと泊まる気だったんじゃねぇのか
「お前らんちから出勤すんの楽じゃん」
「やっぱりそれが本音かよ!」
「はっはっはっはっ……」
もうわかってる
どうせ断れないんだ
「…………行きますよ……」
「やりぃ」
「はぁ……」
俺は肺の奥底から溜息をついて、タクシーを止めた
伊勢さんに殆どの体重をかけられて俺の肩が悲鳴を上げている
さらに酒臭い息をかけられて、俺たちは何でこんな人に売り上げで負けているのかわからなくなってきた
惨めだ……
鍵を開けて家の中に入ると
「おっじゃまっしまーす」
「はいはい……」
伊勢さんはまっすぐ廊下を進み、リビングに入るとすぐにソファに横になった