
言葉で聞かせて
第12章 忘れられないこと
「長い間交際をした中で、普通の恋人がするようにキスをして、何度か身体を重ねました」
悠史の長い指が微かに震えている
怖いんだろうな
「僕なりに誰より大切に扱っていたつもりで、誰よりその人が好きでした。でも、その人はある日突然僕に別れを告げました」
千秋が目を見開く
悠史の底抜けの優しさに満足出来ないなんておかしい、とか思ってるんだろうな
「理由は……………っ」
悠史の言葉が止まる
手の震えがさっきより酷い
俺が手を伸ばそうとすると、それより早く千秋が悠史の手に自分の手を重ねた
「大丈夫です……ゆっくり、話してください」
千秋が微笑むといつの間にか険しくなっていた悠史の表情が緩む
ゆっくりと深く呼吸をした悠史は「ありがとうございます」と言ってから再び語り出した
「彼女が別れを切り出した理由は……僕が気持ち悪いから、です」
今度表情が曇ったのは千秋の方
「気持ち悪い」なんて付き合ってる相手に言うような言葉じゃないよな
「彼女が気持ち悪いと言ったのは僕が性行為中にするある行動のことです。ある行動と言うのは……唾液や愛液を好んで舐めたり飲んだりすること。気持ち悪い、と言われても僕にはそれを止めることが出来ません……」
悠史の手が強く握られる
「………………僕は……異常性癖の一種でハイグロフィリアと呼ばれる、分泌液嗜好症なんです……」
