
言葉で聞かせて
第12章 忘れられないこと
自分のトラウマだけで精一杯だったこいつはいつの間にこんなに頼もしくなったんだ?
人の過去にまで手出せるほど、強くなったのか
敵わねえな
「苦悩だ悲しみだなんて、俺はもう覚えてねぇけどな」
「それでも、想像でしかなくても、理解したいんです……二人の人生を。僕は二人のことを、愛してますから」
優しく微笑んだ千秋に、安っぽい表現だが救われた気がした
そしてそんな千秋の前で余計なことを考えるのはよそう、と悠史の性癖の原因なんて今更どうにもならない考えはそっと頭の隅にしまい込んだ
「話してくれて、ありがとうございました」
涙が引っ込んでいつもの笑みを見せる千秋に対して、悠史はまだ涙を流している
相当不安だったんだろう
俺は背中をさすってやった
「……っく、ぅ……っ」
「いい加減泣きやめよ。千秋ももう泣いてねぇぞ?」
「むっ……ぃ……」
むい、って
「無理」な
「悠史さん、ごめんなさい。辛かったですよね。無理に話させてごめんなさい」
「おら、千秋謝ってんじゃねぇか。お前が話すって決めたんだから謝らせてんじゃねぇよ。しゃんとしろボケ」
「敦史さんそんな……」
