
言葉で聞かせて
第12章 忘れられないこと
千秋が困ったような顔をして笑うと、悠史が顔を上げた
「……っごめんなさい……大丈夫、です」
目の淵に残っていた涙を手で拭った悠史が微笑む
俺が立ち上がりながら悠史の頭に軽く手を置くと悠史が俺を見上げた
「……」
「……」
まぁ、良かったよな
こいつがこれだけ救われたなら
「疲れた。風呂入ってくるわ」
「あ、はい。洗ったバスタオル後で脱衣所に置いておきますね」
「あぁ」
一人でゆっくり湯船に浸かりながら今日の自分の言葉から過去を振り返る
その時の自分の行動も気持ちも何一つ変えることが出来ないことが歯痒いが、千秋に話したことで多少はすっしりした
たぶん
「…………し、あがるか」
風呂から上がり、千秋が置いておいてくれたバスタオルを使って体を拭く
適当な寝巻きに着替えてリビングに行くと、キッチンで洗い物を済ませたらしい千秋と鉢合わせた
「悠史は?」
「えと、疲れてしまったみたいで……」
若干申し訳なさそうな千秋の目線の先にはソファで眠る悠史
「悠史、悠史……起きろ。寝るなら風呂入ってから寝ろよ」
「……、ん……」
身じろぎした悠史が俺を見てまた寝に入ろうとするから、無理やり担ぎ上げた
