
言葉で聞かせて
第12章 忘れられないこと
「っわ!?なに、敦史!?」
「いいから風呂入れ。酒臭えんだよ」
脱衣所に下ろすと、悠史に「乱暴すぎ」と文句を言われたがそんなこと知るか
起こしてやってんのに起きないのが悪い
悠史を置いた俺はリビングに戻る
すると、俺が悠史を担ぎ上げたまま廊下に消えたから心配だったのか千秋が待っていた
子犬みてぇだ
「ふ、ちゃんと自分で入らせたよ」
湯船にスーツごと沈めたわけじゃねぇし
「そうですか、良かった」
表情を和らげた千秋の頬を撫でると、手に擦り寄ってくる
今度は猫
面白い
「ふは」
俺が突然笑い出すと、千秋は驚いた顔をする
「なんですか?」
「いや……」
あーなんか、気抜けたかも
大したことねぇのに、止まんねえ
「はははっ」
「えっ……」
なんでそんな笑うの、と千秋が表情で訴えかけてくる
俺は笑いが止まるまでちょっと待ってくれ、と千秋の顔の前で手を広げた
一通り困惑顔の千秋の前で笑ってようやくおさまった頃再び千秋が「なんで笑ってたんですか?」と聞いてきた
「いやなんか気抜けただけ。さっきまでらしくもなく張り詰めた空気感出してたからよ」
