
言葉で聞かせて
第12章 忘れられないこと
悠史が千秋に有無も言わせずシャワーを当てる
全身くまなくお湯で流して悠史は満足気
「綺麗になりました。お湯に浸かっていいですよ」
悠史が微笑むと千秋は悠史の言った通り立ち上がって、湯船に足を入れた
俺が端に寄ると千秋は俺と反対側に浸かる
「ちょっと……熱い……ですね?」
「そうか?俺が浸かって少しは緩くなってると思うけど」
俺が手を伸ばして千秋の肩にお湯をかけると、千秋は若干肩を竦めた
本当に熱いみたいだ
「ははっ」
「やめてくださ……」
俺が面白がってお湯をかけていると悠史に怒られる
「敦史、やめなさい」
「はーい、母さん」
やめるかわりに俺は千秋を引き寄せて背中から抱きしめる
はぁ、いいね
落ち着く
湯舟から立ち上る湯気を眺めていると、今度は千秋が「ふふっ」と笑った
「ん?なんだ?」
「ほんとだなーって」
「あ?」
ほんとだなーって?
ガキの感想みてぇだな
「敦史さんの周り、ちょっとだけ緩いです」
にこにこ俺を振り返る千秋が可愛くて、俺は本能的の赴くまま千秋にキスをした
「ん……」
「お湯と同じ温度にしてやろうか?」
俺が囁くと悠史に鋭いツッコミを入れられる
「それじゃ人体の全細胞が死滅しちゃう」
