
言葉で聞かせて
第12章 忘れられないこと
「余計なこと言うなっつの」
「ふふっ……」
笑いだしたのは腕の中にいる千秋
「ん?」
「お二人が話してるのって僕大好きなんです」
「へぇ……」
俺は大して興味がなくて天井を見上げたが、悠史が湯船に浸かりながら千秋に返事をした
「僕達の話、別に普通の兄弟とかわらないですよね?」
「うぅん……なんと言うか」
悠史が入るスペースを空けながら千秋が考えて出した答えは結局
「お二人のことが好きなだけなんですかね」
だった
ど天然野郎
俺が声もなく笑っていると、それを見た千秋が「え?え?」と慌てている
「ふふふっ……千秋さん、こちらに来てください」
悠史が手招きして千秋を引き寄せる
俺の腕の中から悠史の腕に移った千秋が振り返り気味に悠史を見上げた
「僕も、千秋さんが好きですよ」
表情を和らげた悠史が千秋にキスをする
啄むだけのキスを何度も
暫くして離れた千秋に悠史が微笑んだ
「可愛らしいですね」
「もう……悠史さん……」
恥ずかしがって肩口に顔を埋めた千秋の頭を悠史が撫でる
完全に二人の世界かよ
面白くねぇな
俺は俺の身体の横に伸びてきていた千秋の脚を手でするりと触った
