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言葉で聞かせて

第12章 忘れられないこと


「ひゃっ……!?」


千秋が肩を揺らしながら反応して、俺を見た

その反応に顔がニヤつく


「忘れんなよ、千秋。俺もお前のこと思ってるぜ?」


足の指の間に自分の指を絡ませると片目を瞑りながら千秋が反応した


「は、い……」


千秋の顔は真っ赤

俺はしてやった感満載で満足


こんな甘い雰囲気
人生で味わう事になるなんて思ってなかった

悠史の人生までめちゃくちゃにした俺が


揺れる水面を眺めながら考えていると、足の裏を擽られた


「!?」


ぱしゃん、と音を立てながら俺が勢いよく足を引くと、それに驚いた千秋が「どうかしましたか?」と聞いてくる

犯人は千秋じゃないらしい

それならーーと視線を奥に移すと、意地の悪そうな顔の悠史がいた


お前かよ


動いた時に落ちてきた前髪を掻き上げると悠史が口元だけで笑う



ーー考えすぎ


は?


ーー全部背負いこもうとするな。僕は千秋さんよりもっとずっと前から、敦史のこと許してる。あの時敦史のことを止められなかった僕を敦史が許してくれたみたいに


ーーあれはお前のせいなんかじゃ……


ーーなら僕のだって、一つも敦史のせいじゃないね

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