
言葉で聞かせて
第12章 忘れられないこと
そう伝えた悠史は話はこれで終わり、と目を逸らして千秋の頭に自分の頬をすり寄せた
きっとこいつもう何にも話す気ねぇだろうな
俺は大きなため息を一つして、湯船から立ち上がった
風呂からあがって、大きな欠伸をしながらタオルで頭を拭いていると、千秋が浴室のドアを開けた
「おう。もういいのか?」
「はい」
千秋は何故かにこにこと微笑んでいる
なんだ?
妙に上機嫌だな
俺が訝しげに思いながら眺めていると、さっさと身体を拭いて着替えた千秋がリビングに小走りで駆けて行った
「?」
暫くすると廊下からガタガタというでかい音が聞こえてくる
「なんだ?」
廊下に顔を出すと千秋が何故かリビングの椅子を持ってきていた
「千秋?何してんだお前」
「……ぁ、と……っ」
大して重くもねぇだろうその椅子を随分苦戦しながら運んでくる千秋に苦笑しながら片手で持ってやる
「ありがとうございます」
パッと笑った千秋の頭を軽く撫でて「どこ運ぼうとしてたんだよ?」と聞いた
「えと、脱衣所に……」
「ここでいいのか?」
適当な場所に椅子を置くと、千秋が椅子を叩いた
