
言葉で聞かせて
第12章 忘れられないこと
「はい、乾きましたよ」
「あぁ。サンキュ」
千秋がドライヤーを止めて俺の髪の毛に櫛を通してくれた
「髪、伸びましたね?」
「そうだな。普通に後ろで結べるしな」
「ワックスで固めてるとわからないんですけどね」
「まぁ、立ててるし」
笑いながら千秋が俺の髪を手で纏めてみたり流してみたりして遊んでいる
そういや前に俺の髪好きとか言ってたんだっけ?
「綺麗な髪ですね」
「染めてもいねぇお前の髪のがよっぽど綺麗だろ」
「そんなことないです」
千秋は両手で掬った俺の髪に顔を寄せて息を吸い込む
「いい香り」
どうしたんだこのうっとりモードは
突然こんな風になりやがって
「シャンプー、お前も同じの使ってるだろうが」
「そうなんですけど……なんか、違います。僕のと敦史さんの、違う匂いがする……」
そう言って千秋はまた俺の髪に顔を寄せる
俺は千秋の後頭部に手を回して引き寄せ、そのままキスをした
「あんまりそうやってると、第二ラウンド始めんぞ」
俺が意地の悪い顔で笑うと、また顔を赤くして動揺すると思った千秋が俺に自分からキスしてした
「!」
「望むところです。……けど、明日はお仕事なのでお預けですね」
