言葉で聞かせて
第13章 言葉で聞かせて
「何ですか?」
「どうかされましたか?」
帰って来た時は普段通り、ご機嫌だったのに
僕が何かしたんだろうか
微笑んでいる表情が固い
「…………」
千秋さんは黙っていて、
「……」
僕も答えを待つ
すると千秋さんの表情が歪んだ
眉間に皺を寄せて、唇はへの字で
拗ねてる、みたいなーー
僕の考えの途中で千秋さんは突然駆け出して、僕の腕の中に飛び込んできた
「わっーー」
それを受け止めたはいいんだけど
なにこれ、可愛い
「ーーー………です……」
千秋さんが僕の胸に顔を埋めたまま話すから、1度目はほとんど聞き取れなかった
「千秋さん?」
頭を撫でながら聞き返すと、今度は聞き取れる声量で答えが帰って来た
「なんでか急に……お客さんの女性に嫉妬してしまったんです……」
「!」
それはなかなか
「大変ですね……」
僕の言葉に千秋さんが顔を上げる
傷ついた顔
僕は安心させるために「そうではなくて」と笑った
「そんな可愛いことを言われては、我慢できなくなってしまいそうだ、という意味ですよ」
「我慢?」
千秋さんの耳元に鼻を擦るように近づける