
言葉で聞かせて
第13章 言葉で聞かせて
悠史さんの優しさに感動しながら漸く身体の力を抜くと、むっとしたような敦史さんが僕を背中から覆うように抱き締めた
「なんで悠史に頼んだよ」
頼る?
「いつの話ですか?」
「今さっき」
今さっき?
考えてみればさっき元に戻らない、と焦った僕は悠史さんの名前を呼んでいた
「……でもあれは、敦史さんが悪いじゃないですか」
「そうだよ、ばか敦史」
悪戯してきたのは敦史さんじゃないか、と心の中で責めるとそれに同調するように言った悠史さんに前側から抱き締められる
両側からサンドイッチにされた僕は身動き取れなくなってしまった
「あぁ?俺なんかしたっけ?」
本当にわからないのかしらばっくれているのかわからない敦史さんを肘で突きながら教えてあげる
「悪戯したじゃないですか」
「いたずらぁ?……あーー……って、別にあんな小さいことどうでもい……って」
「千秋さんが困ってる時に追い打ちかけたことは変わりないでしょ」
言い訳しようとした敦史さんは悠史さんに何かされたらしくて痛がりながら言葉を止めた
そして
「はぁ……悪かった。……身体、大丈夫か?…………大丈夫なら、俺にもキスしろ……」
小さな謝罪の言葉を言って首筋に顔を摺り寄せられれば、僕にはもう怒る気力は湧かなかった
