
言葉で聞かせて
第13章 言葉で聞かせて
「でも、2人もお疲れでしょうし、面倒くさいなら明日でも良かったのに……」
僕がそう言うと、今度は悠史さんが不思議そうな顔をした
「面倒くさい、ですか?」
「だって、じゃんけんで負けた方が行くってことは行くの嫌だったんですよね?」
すると悠史さんは目をぱちくり瞬かせて、微笑んだ
「そんなわけないじゃないですか」
「え……」
「この状況で、千秋さんと離れるのが嫌だったからじゃんけんしたんですよ。千秋さんのお世話をするのが嫌なんて、そんなことあるわけないです」
僕と離れるのが嫌だったから……
悠史さんの言葉を反芻して意味を理解すると、顔に熱が集まるのがわかった
「ふふふ、真っ赤。可愛らしいですね」
「あう……」
悠史さんに指で赤くなった頬を弄られる
「やめて」と小さく抵抗しながら戯れていると、ドアの開く音がした
「敦史さん、おかえりなさい」
「あぁ。……ほら、身体拭いてやるから離れろ」
「はい……え、悠史さん?」
「……」
「おい悠史」
敦史さんが身体を拭いてくれると言ってくれているのに、悠史さんは僕をより一層強く抱きしめて離れようとしない
「ふふ」と笑い声を零す悠史さんはなんだか悪戯っ子みたいだ
