
言葉で聞かせて
第13章 言葉で聞かせて
ちゅ、と僅かな音を立てて悠史さんが離れると、敦史さんが呆れ返った顔をした
「どうせなら千秋から直接貰うっつーの」
「いいじゃない。僕のキスも受け取れて一石二鳥でしょ?」
「はぁ……」
いつもならなんでキスなんかすんだよ!と怒るところだから、朝から敦史さんが怒ってしまうかと思ったんだけど
怒らない……?
珍しい
敦史さんは文句を言っただけでお箸を手に取った
「? 千秋? 飯食わねぇの?」
「あ、はいっ。食べます」
意外すぎてぼーっとしてた僕に敦史さんが訝しげに声をかけてきて、僕も慌てて席につく
「「「いただきます」」」
そのまま普通に2人ともご飯を食べ始めるから
何か心境の変化でもあったんだろうか
って思ってしまう
2人のキスを見たのはあれ以来かな
あの、僕が記憶をなくしてる時?
と言って今回の光景も頭の中に思い浮かべると
「千秋さん?どうかしましたか?顔が赤いですけど」
「あ? やっぱり体調くずしてたのか?」
なんて2人に言われてしまった
「いえっ、なんでもありません」
「そうですか?何かあったらすぐに言ってくださいね?」
「はい。ありがとうございます」
