
言葉で聞かせて
第13章 言葉で聞かせて
オーナーさんが運んでくるジャケットやスラックスはどれも僕にサイズがぴったりで、正直1着目に着たもので十分素敵だと思ったんだけど
「うぅん、お似合いですが、まだスーツが負けてしまいますね……」
「負け……?」
「次はこちらをお願い致します」
「……はい……」
なんだかんだと文句を言うオーナーさんに何着もスーツを持ってこられて、着せ替え人形のように着替えさせられる
目が回る
もう何がいいのかわからない
安いのがいいですって言いたいけど、何でか値段が1つも書いてない……
そして着替えたスーツの数が2桁を優に超えた頃
「どう、ですか……?」
「!! 素敵です!!素晴らしくお似合いです!!!」
漸くオーナーさんの納得のいくスーツが見つかった
やっと終わった
なんだか、動物園歩いているよりずっと疲れたんだけど……
ぐったりしながら外に出ると、いつの間にやらスーツに着替えていた敦史さんと悠史さんに迎えられた
「古田様、如何でしょうか?」
「とてもよくお似合いです、千秋さん」
「まぁ、いいんじゃねぇか?」
2人に褒めてもらった僕だけど、そんなことより気になったのは2人のスーツ姿
仕事用じゃなくフォーマルな場所に相応しい装いのスーツは、本当に2人に似合っていてため息が出そうなほどだった
