
言葉で聞かせて
第13章 言葉で聞かせて
失声症の時の話なんて重くて面倒くさいと思うのに「初めてが僕達で嬉しいです」なんて返されて、心臓が縮んだ音がした
「注文はしないんですか?」
そういえばさっきからメニューどころかウェイターさんさえ現れない
(記憶はないけど)案内してくれた人だってもういないし
そう思って綺麗な椅子に座りなおすと、敦史さんに笑われる
「ははっ、千秋、落ち着けよ」
「うっ……」
ずっとそわそわしてたの、バレてたんだ……
「注文は予約した時に終わってんだよ。すぐ前菜から来んだろ」
「コースで予約してあるので、心配されなくて大丈夫ですよ」
悠史さんにも笑われて、僕はとにかく今から人が来るならちゃんとしようって自分の居住まいを正した
「お待たせいたしました」
運ばれてきたのは、宝石のようにキラキラした…………何か
アレだって言えないのは、僕の知識の問題
自分が作れるレベルの料理名しか知らないから、たくさんのカタカナと食材の名前が飛び交う説明には何1つついていけない
とにかく全部、すごい
料理のはずなのに食べるのが勿体無い
芸術品みたいだ
1皿にたくさん並ぶ料理のうち1品に仕上げ、とソースを掛けてくれたウェイターさんへ「ありがとうございます」と微笑むとクス、と笑われた
