
言葉で聞かせて
第13章 言葉で聞かせて
「えっ……」
「失礼致しました」
すぐに平静な顔に戻ったウェイターさんを悲しい思いで目で追う
何か、変な顔してたかなぁ
「千秋、媚びてないで食うぞ」
「媚び……!? 媚びたてなんかないですよ」
「今の店員、明らかにお前に惚れてたろ。愛想振りまくのもいい加減にしろよ」
一体どういうことなの
首を傾げたけれど、言ってる意味はわからないし放っておこう
あんな一瞬で惚れるわけないじゃないか
適当なこと言って……もう
心の中で愚痴りながら1番綺麗な色味の料理を口に運んでみる
すると、口の中に広がったのは新鮮なホタテの香りと柑橘系のフルーツの香り
「!!!」
ホタテもぷりぷりで、果肉が入っていたらしいソースはプチプチと弾けた
「ん……んん〜〜!美味しい!」
ほっぺが落ちそう、ってこのことかな
飲み込むのが勿体無い
ずっと味わっていたいくらい、美味しい
「ふふっ、良かったですね」
「たまにはこういう料理も悪くねぇよな」
感動に浸っている僕に反して敦史さんと悠史さんは当然のように食べ進めていて
年上なのに、情けないな
なんてまた少しだけ思った
