言葉で聞かせて
第13章 言葉で聞かせて
「義兄?」
すると、コックさんは驚いたような顔をした
「どうかしましたか?」
「いや、随分高いコースなもんでてっきり恋ーーー」
そこまでコックさんが言いかけたところで、敦史さんが「おい!」と声を張り上げて止めてしまった
でも、そこまでの話から全文推測するのは簡単で……
『てっきり、恋人を連れてくるのかと思った』
そんなに、すごいコースだったのかな
確かにびっくりするほど美味しかったけど
「お前なぁ、挨拶に来んのに余計なこと言ってんじゃねぇよ!」
「お仕事に戻られてはどうですか?」
敦史さんも悠史さんもすごく怖い顔をしている
今すぐにでも立ち上がって胸ぐらを掴みそうな勢いだ
そんな2人に凄まれているのにコックさんは余裕の表情で笑っている
「はははっ、怖い義弟をお持ちですね」
「早く行って下さい……?」
「はいはい。愛されてるね、お兄さん」
「チッ、とっとと行けっつの!」
そして、ひらりと手を振るとコックさんは部屋を後にした
後に残された僕たちの間には微妙な空気の沈黙が流れる
「「「……」」」
高いコース……
愛されてる……
お金じゃないけど、でも……嬉しいな……
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