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言葉で聞かせて

第13章 言葉で聞かせて


「悠史さんも、敦史さんも、ありがとうございます」


照れ隠しにえへへ、と笑いながら告げると、やっぱり知られたのはバツが悪いのか照れた顔をした2人が僕の方を見た


「喜んでいただけて良かったです」
「でも、1番喜んで欲しいのは、これじゃねぇよ」
「えっ……」


1番はこれじゃない?

なんだろう?
僕、今日何か見逃してたかな

喜んで貰いたいのに喜んで貰えないのってすごく嫌だよね
どうしよう


本人に聞くのもどうかと悩んでいると、敦史さんが「そろそろ行くか」と席を立ってしまった


ど、どうしよう
家に帰っちゃうよ……

その前にどうにかしなきゃ


そう思うのに、神妙な面持ちの2人の顔に何も言えなくて


「……」


黙ってついていくことしかできなかった

会計を済ませた2人に付き従ってレストランを出ると、まるで僕たちを待っていたかのように車が目の前にやってくる


うぅ、スムーズすぎるよ
少しでも時間を稼ぎたいのに……


そう思うけど、敦史さんも悠史さんも当然のように車に乗り込んでしまった

僕は俯いて、車の中でも手を見ていることしか出来ない


どうしよう
こんなに素敵なデート企画してもらったのに、僕がちゃんと気をつけてないから喜んで貰いたいところ見逃しちゃったんだ

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