
言葉で聞かせて
第13章 言葉で聞かせて
展望台のようになっているそこに設置された手すりに駆け寄ってみると、夜景の全貌が伺えてより綺麗だ
「すごい……」
1人で呟いて、隣に2人がいないことに漸く気がつく
あっ……
僕、1人ではしゃいじゃった……
恐る恐る2人を振り返ると、2人は僕を見て目を細めて微笑んでいた
「!!」
あれ
さっきまでの2人の違和感がなくなってる……?
2人が僕に追いついて両隣に来ると、笑いながら吹き寄せる風に髪をなびかせた
「良かったな、喜んでもらえて」
「うん」
「?」
「千秋さん、ここ、気に入っていただけましたか?」
それは、もちろん……
「はい。こんなに綺麗な夜景、見たことがないです」
「千秋、気づいてねぇの?ここ夜景だけのために連れてきたんじゃねぇんだけど」
「え?」
敦史さんを振り返ると、敦史さんが視線で空を指している
つられるように僕の視線も上に移動した
すると
「すごい……」
自然と口から出た言葉に、今日だけで一体何度感動するのかって可笑しく思ってしまう
それに、小説家なんて仕事をしているのに馬鹿みたいだけど
すごい以外に何にも言葉が出てこない
「どうだ?」
「素敵、です……」
