テキストサイズ

言葉で聞かせて

第13章 言葉で聞かせて

悠史・敦史目線


千秋さんが
千秋が

倒れたあの時
2人での話し合った内容は端から見れば滑稽なものでしかないだろう


『千秋はお前のことが好きなんだから、お前が側にいてやりゃいいだろうが。俺がここを出りゃいい』
『何言ってるの?敦史のことを好きなんでしょう?あんなに必死に泣かれたのにわからないなんて随分鈍感なんだね』
『なんだと?』
『……何?』


兄弟喧嘩らしい兄弟喧嘩は久しぶりだった

だから、相手から浴びる喧嘩腰の視線や態度は少しだけ
楽しいなんて感じてしまっていた


『泣いたのはお前がいなくなった時も一緒なんだよ。お前はそん時そこにいなかったからわかんねぇだけだろうが』
『それは敦史だって同じでしょ。僕が帰ってきた時の千秋さんの様子が敦史にわかるの?』


俺が 、お前が
僕が、敦史が

水掛け論のような言い合いを繰り返して

そして、途中からはもうお互いに気づいていたんだろう


相手の知る由のないことで自分がいかに無駄な嫉妬心を燃やしていたか
相手がどれほど傷ついてきたのか


どれだけ一緒にいたと思ってるんだ
傷の深さなんて目を合わせるだけで言葉より明白に伝わってくる

ストーリーメニュー

TOPTOPへ