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言葉で聞かせて

第13章 言葉で聞かせて


続く言葉は遮られた


『一緒にいて、救われたのがお前だけなわけねぇだろうが!!』
『!?』


高まる感情をぶつけるように叩かれた机の音が部屋に響く


『俺だって、お前に救われてんだよ……』
『そんな……』
『お前だって、俺の理解者だったろ。あいつを失って、荒れた俺を救ったのはお前だろうが』


言葉にして
言葉にされて

ようやく全てが繋がったように思った

離れられないのは愛しい恋人とだけじゃない
目の前のこの血の繋がった兄弟とも離れられるわけがない

自分たちはお互いにコンプレックスを抱えていて、それを唯一理解してくれたのがこの世でたった1人の半身で

だから、本当は離れたくなんかない
失いたくない


そう、強く思った


『好き……』


相手が言ったのか自分の心が漏れたのかわからなかった


血の繋がりとか
世間体とか
そういうものが邪魔するなんて許さない

そんなもので自分達のこの関係が切れたりしない


もうとっくに
心も身体も繋がってる


『俺、千秋のことが好きだよ。……でも、お前のことも、失いたくないんだ。千秋も、悠史も……幸せにしてやりたい……』
『あ、はは…………は……僕も……だよ、敦史』


涙が頬を伝った

でも
この関係に愛しいあの人を巻き込んでもいいのだろうか


『千秋、俺のこと許してくれるかな……』
『また弱気なこと言って。怒るよ』

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