言葉で聞かせて
第13章 言葉で聞かせて
2人に返事を強請られて、返事なんて聞く必要もないのにって思ってしまう
だから素直にはいって言えなくて
「……さっきみたいに、ぎゅってして欲しい、です……」
なんて、戯言をひとつ
「ふふふ、いつまででも抱き締めてさしあげます」
「あぁ。当たり前だろ?家族になるんだからな」
「結婚、ですよ?千秋さん」
「親子になりてぇわけじゃねぇからな」
意味を強調して言い直す2人に、思わず笑ってしまった
「……はい。喜んで。…………こんな僕で良ければ、お嫁さんにして下さい」
僕がそう言うと、2人はすぐに立ち上がって僕を抱き締めてくれた
あったかい
心の中がじんわりとあったかい
「泣くなっつの」
「目が溶けてしまいますよ?」
「だっで…………ぅ、く……」
2人は気づいてたのかな
両親が死んでしまって
唯一の肉親だった兄も結婚した
その結果
僕には家族と呼べる人がいなくなってしまったってこと
もちろん兄さんはそんなことないって怒るだろうけど
「家族」って響きはもう僕と兄さんには合わない気がするんだ
そのことを少しだけ寂しいって思ってた
だから、家族って言ったのかな
「千秋さん、これからずっと一緒ですよ」
「離さねぇから。泣くなよ。な?」
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