言葉で聞かせて
第14章 番外編「千秋と酒」
「千秋? どうした? なんかあったのか?」
だが千秋はそれにも返事はせず
「お……っとと」
近くに寄った俺の服を掴んで引き寄せた
悠史に抱き着きながら俺の服も自分に引き寄せて離さなくなった千秋
一体どうなってんだ?
困惑する俺達兄弟は自然と目を合わせ
ーーどういうこと?
ーー俺にわかるかよ
千秋を刺激しないように無言で理由を探る
しかしその間も千秋の涙は止まらないらしく
「……っ、ぅ……っく……」
小さな嗚咽が漏れてきこえていた
なんなんだ、マジで
俺達が何かしたか?
いや、酒飲んでただけだよな
俺が悠史のすぐ隣まで近寄って座り千秋の頭を撫でると、千秋がもぞもぞ動いて
「……」
掴んでいた服を離して今度は俺の片腕を引き寄せた
まるで子供が自分の大事な物を抱き締めて離さないように、千秋は俺と悠史を抱き締めて離さない
「?」
「?」
その意味不明な行動に俺たちは疑問符を浮かべる事しか出来ず
背中を撫でたり頭を撫でたり声を掛けたりと、始めて小さい子供を泣かした時のようにわたわたし続けた
「千秋?」
「千秋さん? 泣かないでください。ね?」
「……」
どうすりゃいいんだよ