言葉で聞かせて
第14章 番外編「千秋と酒」
僕達2人が並んで横になって、その上に千秋さんが僕達を抱きしめるように折り重なっている
そんな奇妙な状態のまま、千秋さんはまだ涙をながしている
じんわり濡れる僕達の服は、明日洗えばいいけど
どうして泣いてるのか理由も言ってくれないからすごく心配
でもここ最近は特に何もなく平和に過ごしてきた筈なんだけど
うーん……
敦史も敦史で理由を考えてるらしいけど、やっぱり思い当たらないみたい
何かあったかな
お店のお客さんに嫉妬?
ないない
それならちゃんと言ってくれるはず
敦史と喧嘩?
そもそもしない
千秋さんのお仕事で何かあったとか?
それでも突然泣いたりはしないよね
と色々考えを巡らせていたら
「!」
「は?」
僕達の胸の上にある千秋さんの頭から小さな寝息が聞こえてきた
「寝ちゃった……の?」
「……嘘だろ」
小さな声で驚愕する僕達
「マジで一体なんだったんだ……おい」
「僕に聞かれてもわかんないよ。明日本人に聞かないと」
「そうだな……って、千秋の腕離れねぇんだけど」
「……今日はこのまま?」
「軽いっつっても成人男性だぞ。寝れるか?」
呆れ声の敦史
僕も同感だけどね