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言葉で聞かせて

第6章 休息?


千秋さんの横でしゃがみこんで水槽を見ていた敦史は立ち上がると呟くように言った


「うまそうにしか見えねぇ」
「こら」


千秋さんはそれを見て可笑しそうに笑っている


「あ、ほら千秋。ここの有名な大水槽だぜ?」


ゆっくりと歩いて見て回っていた僕達の前に現れたのは全国でも有名な大水槽

岩や光で見事に再現された海を切り取ったような水槽は、僕達だけではなく他の人の足も止めていた


綺麗だな
水族館をこんなにゆっくり見るのは久しぶり?いや、初めてかもしれない

遠い昔に家族で来た記憶があるけど、その時は魚が面白かっただけで水槽の作りの素晴らしさなんて見てもいなかった

僕も大人になったのかもしれない


後は……昔いた彼女とのデートで何度か来たかな


彼女、という響きに懐かしさを感じて一人心の中で笑いを漏らした


すると、水槽のすぐ近くで魚を眺めていた千秋さんが隣にいた敦史の裾を引いた


「ん?ーーあぁ、わかった。悠史!」
「何?」
「千秋がイルカショー見たいってよ」


腕時計を確認すると、水族館に入ると時にパンフレットで確認した時間が迫っている


「ほんとだ。そろそろ移動しないとね」
「あぁ。行くか」

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