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歌 DE 小説

第1章 秘蜜 ~黒の誓い~

「…オーヴァン?」
声をかけたのは天界でシエルと恋人だった天使だった。
「ずっと心配して、捜してた…キュアテリヌス様も心配していたんだぞ」
オーヴァンの言葉にシエルは小さく嘲笑する。
「フッ…自分の父親の事、名前で言うんだ?馬鹿みたい」
「シエル?」
「ねぇ、知ってる?人間って素晴らしいよ…凄く綺麗で悪いんだよ」
「シエルまさか-!?」
オーヴァンはハッとしてシエルを壁に押し付けた。
「人間に…恋を…したのか?」
シエルは答えず、変わりに不敵な笑みを浮かべる。
「嘘だ…嘘だろ?なぁ、嘘だと言ってくれ!!」
「離しなよ…僕に触れてもオーヴァンが穢れるだけだよ」
シエルの言葉にオーヴァンは力なく膝を着いた。
「本当に…人間に恋をしてしまったのか…私達は性別を持たない。だからこそ性別を判断する言葉も遣えない…なのにお前は-」
「だから何?僕は彼女を愛してる。罪でも良い…愛してるんだ!!」
オーヴァンはゆっくりと立ち上がった。
「…"お父様"が裁きを下す」
「ああ"全知全能なる神様"か。あの人は独りでは罪人を裁く事も殺す事も出来ない」
シエルは嘲笑する。
「口を慎め。寛大慈悲なる"お父様"はきっとお前を赦し救って下さる…だから、私と来なさいシエル」
「嫌だと言ったら?」
シエルのその言葉にオーヴァンは懐から、白と銀で見事に調和されている銃を出してシエルに銃口を向けた。
「私が今、此処で…お前を…」
オーヴァンは下唇を噛んだ。
一度でも心から愛した者を殺すのを躊躇う心の表れだった。

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