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歌 DE 小説

第1章 秘蜜 ~黒の誓い~

『皆さん何故、天使が人間界に留まってはいけないか分かりますか?』
まだ、出来て間もない天使達に大天使は聞く。
『罪を抱いてしまうから?』
天使の一人が答える。
『そうですね。では、その罪は何か分かりますか?』
『傲慢』
『欲?』
『怠慢だよ』
『違うよ怒りだよ』
大天使は頷く。
『確かに皆さんの言っている罪は正解ですが…今の天使は性別が在りません。それに関わりが在る罪です』
『嫉妬?』
大天使は横に首を振る。
『正解はこの絵に在ります』
そう大天使が指した絵には大天使ミカエルと、その兄の堕天使ルシファーとの天界戦争の決戦が描かれていた。
天使達はその絵を見ても分からなかった。
『天使としての最大の罪は…人間への恋です』
『大天使様、なんで人間への恋が罪なのですか?』
そう聞いたのは幼いシエルだった。
『良い質問です…では、教えましょう…』








過去の事を思い出しながら歩いていると、シエルは或る事に気付いた。
「この場所は…」
今、シエルが居る場所はアエリアルに襲われ、アリスに初めて出会った場所…。
その時の事を思い出すとシエルは訳も分からず涙が流れた。
「う…うう…」
嗚咽を漏らしながらシエルは膝を着いた。
涙が流れる程、シエルはアリスの事が浮かんだ…。
アリスに抱いた恋心、セシルに放った怒り、そしてレオンに対して感じた嫉妬。
シエルは次第に泣いているのが馬鹿らしくなり、途端に笑い始めた。
「フ…フフフ…アアハハハハハハハ…」
そして空を見上げながら呟き始めた。
「此処まで…此処まで堕ちたんだ…こうなったら堕ちる所まで堕ちるだけだ…ハハハハハハハハハハハハハハハハハ!」
シエルは笑っていた…だが涙は絶え間なく流れていた。
「やっと見付けた」
その時、背後から聞こえた声にシエルはゆっくりと振り向いた。

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