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歌 DE 小説

第1章 秘蜜 ~黒の誓い~

「sacred=revolver…そうだったね。オーヴァンは"執行人"罪人を裁くのが仕事だった」
シエルは両手を広げて十字架を模した。
「さぁ、外すなよ。天使の心臓は胸の中心だ」
挑発するシエルにオーヴァンは諌める。
「黙りなさい…貴方は…裁かれる…」
「手が震えているぞ?」
「黙るんだ…」
「躊躇うな。目の前にいるのは堕天使…"罪人"だ。慈悲や容赦はいらない…撃つんだ」
「黙れ!!」
堪らずオーヴァンは叫んだ。
「頼むから…撃てなんて言わないでくれ…」
オーヴァンは銃を下ろした。
瞳からは涙が溢れ、震えていた。
「オーヴァン…何故、殺してくれない?」
「愛しているからだ…」
「やめてくれ…僕は辛いんだ。彼女の事を想うだけでこんなにも胸が-」
「シエルがその人間を愛している位、私もシエルを愛してる!!」
「なら早く僕を殺してくれ!!」
二人は泣いていた。
やり場の無い愛と憎しみに耐えかねて…。
「シエル…"執行人"として、一週間だけ猶予を与えます。その内に悔い改めなさい。もし…」
声の震えを抑える為に一つ大きく息を吸ってオーヴァンは言った。
「もし、改められなければ…貴方の罪を裁きます」
オーヴァンの言葉にシエルはまたしても嘲笑する。
「"天使としての使命"か…下らない…」
オーヴァンはシエルから背を向けて一言呟いた。
「シエル…私は祈っておくぞ…」
それだけ言うとオーヴァンは姿を消した。


オーヴァンが消えるとシエルは空を見上げ皮肉そうに呟いた。
「猶予…か。それがどれだけ慈悲深く、どれだけ残酷か分かっているのか…?」

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