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歌 DE 小説

第1章 秘蜜 ~黒の誓い~

空を仰いでいると、顔が濡れた。
雨が降ってきたようだ。
「人間の罪…強欲…」
今のシエルに笑う事も、泣く事も出来なかった。
ただ、胸が痛むだけ…。
雨が地に当たる音だけが只々、心地良かった。
雨の音に耳を傾けていると他の音が聴こえた。
雨水を跳ね散らして走ってる足音…その音がシエルに近付いていた。
「シエル!!」
天使でさえも酔わすその声…アリスの物。
「アリス…」
シエルは力無く微笑んだ。
「どうしたの?傘も差さずに…でも、凄く綺麗だよ」
「シエル…凄く心配したのよ…何か嫌な事があったの?」
「嫌な事?そうだな…欲しい物が在るのに手に入らない…」
アリスは様子が違うシエルを労わる様に、肩に手を添えた。
「シエル…何があったの?私、協力するわ。だってシエルは大切な友達ですもの」
アリスのその言葉ににシエルは息苦しさを感じて、呼吸が上手く出来なくなった。
「シエル?どうしたの?苦しい?」
「ハァァ、ハァ、ハァッハァァ」
彼女の一言一言に胸が押し潰されそうだ。
シエルは胸を押さえながら屈んだ。
「シエルッ!?待っててね!!すぐに馬車を呼んでくるわ!!」
そう言うとアリスは背を向けて走り出した。
薄れ行く意識の中でシエルの頭は冷静に考えていた。




必ず…彼女を手に入れる…





その感情は誓いにも似ていた。




秘め事の様に儚く

蜜の様に甘い


黒い誓いだった…

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