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歌 DE 小説

第1章 秘蜜 ~黒の誓い~

次の日、アリスは鏡の様に光沢の在る十字架を持ってきた。
「はい、シエル様」
アリスがシエルに十字架を渡すとシエルは驚いた顔をした。
「見つかったんだ?」
「広場の噴水の中に在った、と街の人が持ってきてくれたんです」
嬉しそうにアリスは話す。
「笛の方は少し待ってて頂けますか?」
「いや、傷が治ったら一緒に探しに行こう?」
「ええ、是非」
アリスはシエルに微笑むとシエルの近くまで椅子を持って行き座った。
「林檎も持って来ましたので今から剥きますね」
アリスはバスケットから真っ赤な林檎とフルーツナイフを取り出すと鼻歌雑じりに林檎の皮を剥き始めた。
林檎を見つめるアリスの瞳をシエルは見つめる。
「…?。シエル様、どうかなさいましたか?」
見つめられていると判ったアリスはシエルに尋ねた。
「アリスの目は綺麗だね」
「えぇっ!?ーイタッ!!」
予期せぬシエルの言葉にアリスの手が狂い、自分の指を少し切ってしまった。
「大丈夫!?見せて」
幸い、切れたのは人差し指の先だけだった。
「血が…」
シエルはアリスの流れる血を見るとそれを舐めた。
「シエル様!?」
「もう大丈夫だよ」
シエルの言葉の意味が判らず、アリスは傷口を見た。
「治ってる…」
さっき確かに切れた筈のアリスの指先の傷が跡形も無くなっていた。
「魔法みたい」
アリスは笑った。
無垢な天使の様な笑顔で…

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