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歌 DE 小説

第1章 秘蜜 ~黒の誓い~

~次の日~
「さぁ、シエル様。少し暑いとは思いますが、此方のローブを羽織って下さい」
そう言ってアリスはシエルに翼を隠す為のローブを着せる。
「時々、翼が邪魔で嫌になるよ」
「そうですか?私は羨ましいと思っていますよ」
「でも飛ぶ事しか出来ないし、服が着難くて大変だし」
ローブを着せ終えてアリスは外に出ながらシエルに言う。
「飛べる事が羨ましいんですよ。でも、私達も飛べる日が来るかも知れません」
「翼が生えるって事?」
待たせておいた蒸気自動車に乗りながらシエルは聞く。
「いいえ。この前、ドイツでツェッペリン伯爵という方が飛行船と言う空飛ぶゴンドラを造り出したそうです」
「空飛ぶゴンドラ!?どうやって飛んでるの?」
「それはちょっと…私も聞いただけで見た事も無いんです」
アリスとシエルも少し残念そうな顔をすると運転手が話し掛けた。
「お待たせしました。町一番の花屋ですよ」
蒸気自動車を降りるとシエルは喜んだ。
「うわぁ!おっきい。ここなら見付かりそうだね」
今日、二人が出かけたのはシエルが天界で見かけた白い花を見る為だった。
「あ、イアン」
アリスは頭を下げてる運転手に声を掛けた。
「はい、お嬢様?」
「帰りは歩いて帰りますから、家に戻っていて良いですよ」
「畏まりました。では、帰りはくれぐれもお気を付けてお帰り下さいまし。失礼致します」
運転手は再度、頭を下げると蒸気自動車に乗って帰って行った。
店に入ると様々な花の甘い香りが漂っていた。
「ん~良い香り」
シエルは思いっきり息を吸った。
「あら、アリスお嬢様いらっしゃいませ」
その時、花屋の女主人が声を掛けてきた。

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