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歌 DE 小説

第1章 秘蜜 ~黒の誓い~

「セシルさん」
「今日は何の花をお求めでしょうか?」
「あ、今日は私じゃなくて…」
そう言ってアリスはシエルを前にする。
「おや、これは綺麗な…お嬢さん、いや坊ちゃんかね?」
「あ……」
セシルの何気ない言葉にシエルは返事が出来なかった。
天使には性別が無いからだ。
「ま、花に性別は関係無いけどね。それよりアリスお嬢様も悪い子だねぇ、レオン坊ちゃんがいるのに…」
「セシルさん、シエルは女性ですよ」
「ーっ!!」
シエルはアリスの一言に傷付いた。
何故ならシエルは、確かに神様から女性の心を授かったがアリスに思いを募らせていく内に、徐々にだが男性と言う性別にになっている。
「アリス…僕は男だよ」
「えっ?」
「なんだい?アリスお嬢様とシエル坊ちゃまは女性か男性かも分からない仲なのかい?」
「くっ…!!」
シエルは近くに在った花をセシルに投げて、店の入り口に走った。
「きゃあっ!!全く、なんて子だい?アリスお嬢様も優しいのは分かってますけど、優しすぎると危ない目に合いますよっ!!」
入り口に向かう途中、天使として許されない感情を抱いてしまった。
憤怒、怒りと言う名の罪…。
店から出そうになった時、シエルは入って来た男性に真正面からぶつかり、こけてしまった。
「やぁ、すまない。お怪我は在りませんか?」
男性と眼が合った瞬間、シエルの背後からアリスの声が聞こえた。
「レオン?」
「アリス、という事はこの子はアリスのお友達かな?さ、お手をどうぞ」
シエルは花屋の女店主、セシルが言った言葉を思い出して咄嗟にレオンの手を払った。
それを見て、アリスはシエルを怒った。
「シエル、失礼でしょう!!」
初めてアリスから聞いた一喝にシエルは堪らなくなり店の外に走り出た。
『天使は人間界に留まる事は禁止されています』
天界で聞いた言葉がシエルの頭に響く。

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