テキストサイズ

浮遊空母~ぼくの冷たい翼~

第19章 シンガポール戦線

(6)


その頃、企業連合組織“トランキュリティ軍”に属する実験部隊“マグリット”


ミノフスキークラフトにより巨大な岩石を浮かせた移動要塞の格納庫では遊撃部隊のパイロットたちが集まり弔いの誓いを立てていた…


ベテランパイロットのローペは黙って静かにうなだれている


ザンダーは涙を流して若い戦士ヤンネの死を悲しんだ


他のパイロットたちも集まって彼らの悲しみを分かち合っていた


取りまとめているアレクは格納庫のタラップの上から見下ろしていた



帰還した…二機の戦闘データはひと通り見た


浮遊空母キュール・シュランクの新型機はどうやら推力を増幅させつつ、機体の小型化を狙ったものだろう


彼らの連携攻撃はこちら側よりもスピーディーな分、早く早く攻撃を展開させていくことが可能かもしれない


しかし武器は既存のものばかり…


圧倒的に火力不足のように思える


それに引き換え、こちら側の“クラング・ハイノート”は3機とも別々のカスタムを施し火力、攻撃力を高めている


どちらが正解か、まだわからんな…


アレクは少年の容姿をしながらも、その眼は冷淡に分析していた


“ヤンネの死は無駄ではない…、さらなる可能性と補うべき発見をもたらしてくれた…”


いままで後ろから観戦を決め込んでいたが、いよいよ出番か、と自分の機体を見上げた


“クラング・グロウル”


他のフリューゲル機の倍以上はあろう巨体


フルアーマーに身を包み、重装甲な禍々しさ


鈍い漆黒の機体は見たものを“恐怖”させる


アレクはニヤリと笑った…

ストーリーメニュー

TOPTOPへ