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浮遊空母~ぼくの冷たい翼~

第21章 エリュシオン〜幸福者の国〜

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シンシアは何度か覚醒したものの


嘔吐を繰り返していた


女医は安定剤と点滴を投与させたため



数日間、ほぼ眠ったままだった



ようやく落ち着いてきたときには周りの変化を感じ取っていた


管理職の仕事もまわって来ず、報告も来ない


女医に聞くと副長のヴァイカートが隊長代理として第2中隊をまとめ、ベテランパイロットのピーヴィーが副長代理に就いたらしい


どうやら一時的な休養というわけではなさそうだ


ハンセン艦長もハンズィ隊長も顔を見せに来なかった



その後も嘔吐癖は治らず、


ときには高熱が数日間続いたり、


突然、原因不明の全身筋肉痛になったりと


シンシアの肉体は疲弊していった



医務室の入院スペースは奥の方に分けられており、誰とも会話をすることもない


点滴の交換なども女医が行い、外の情報がまったく入ってこなくなっていた…


あれから何日経ったのだろう…



睡眠薬や、体調の不具合で時間の感覚がまったくわからない



こんなにも自分は弱い人間だったのだな…


もう握力も……


少し身体を起こしただけで、頭がフラフラする…


眼球の疲労も凄いし、肌もボロボロだ



“こんなことではアイツに笑われるな…”



そう考えると



自然に涙がボロボロあふれ出してきた


咳をきったように一度あふれ出ると止まらなくなった


ウウウ……と嗚咽し続ける



そのタイミングで女医が点滴を交換しに入室してきた



わかっているが涙が止まらない


女医はハッと気づいて、シンシアに寄り添う


「…グ……、ウウ……、すまない先生…

ふぅ、こんなことではアイツに笑われると思ったら急に……」


「…そうね、彼も元気なアナタに会いたいはずよ…」


「…わかってる……はぁ…」

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