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浮遊空母~ぼくの冷たい翼~

第23章 ベトナム編〜サァシャの罪〜

(4)

その晩、サァシャはクーとの夢を見た


単車の後ろに乗せてもらい、夜のカフェで語らった、若かりし日の暮らし


そして露地の陰で抱き合い、くちづけを交わした記憶


夜でも暑いベトナムの地で、ふたりは物陰にかくれながら愛を確かめあった


裕福ではない家庭同士だったし、娯楽も少ない街ではあったが


ふたりで一緒に居られれば


それで満足だった



クーのたくましい腕に抱かれ、若い肉体を求められ、それだけでふたりは幸せだった


快楽に溺れ、いつまでもつながっていたいと思っていた


慌ただしいセックスでも、求められれば嬉しかった


そして徴兵制度で別れる夜は、泣きながら抱き合い、交わった




翌朝


もう旦那のグエンは家を出ていた


のろのろと起き出すサァシャは自分の股間が潤っていることに気づいた


“やだわ、あんな夢を見たから……”


グエンとの性生活はあまり充実してはいなかった


お互いの両親からは孫の催促をされるものの、今のふたりの収入ではそれは難しかった


洗濯も手洗い、クーラーも無く扇風機だけの暮らし


それでもサァシャは今日の帰り道を楽しもうと機嫌が良かった


クーとふたりで結ばれた、あの思い出の露地に行ってみよう!



サァシャは洗濯を済ませ、家を出た




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