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浮遊空母~ぼくの冷たい翼~

第5章 ~試験飛行~

ランドリールームに足を運ぶと利用者でいっぱいだった

食堂で時間潰しで済みそうな雰囲気でも無かったので仕方なく自分の部屋に戻った

広い空間に自分ひとり

戦友がいるわけでもなくナオトはベッドに横になった

二段ベッドが4基並ぶ8人部屋は一個小隊ぶんだ

8人とワイワイ過ごす時間があれば戦友もすぐに出来るだろう

地上基地ではもっと広い空間に二段ベッドが十数台並べられており50人近くの人間の生活音が聞こえてくる

誰かがポーカーをやり、
誰かは音楽を聴く
腕立て伏せをして体力を発散させている強者や、

女性兵を招き入れて賑やかな宴会をしていたり…


あのだだっ広い居住区では自分だけのプライベート空間は二段ベッドの中だけだった

お気に入りの飾り付けをしたり、
家族の写真を貼ったり、
ベッドの天井部分にセクシーなグラビアポスターを貼るのもお約束だ


あの地上基地での喧騒が嘘のように、この浮遊空母の空間は質素で無駄なものが無かった

自分ひとりしかいない8人部屋だからよけいに何も無いように感じる

ベッドを飾り付けようにもナオトには私物が一切無かった


そういやあ、ジミーのグラビアが無い無いって騒いでて、その後キムの天井に貼ってあったときは大喧嘩になったなァ…

先輩たちが居住区内を満喫しているのをナオトたち訓練生は憧れのように思っていた


いまボクが枕がわりにしているバッグの中に女性の下着があるって言ったら、きっとジミーとキムは“おい、自分だけで楽しもうなんてズルいぞッ!”とか言うんだろうな

ナオトには女性の下着を愛でる趣味は無いが、それが兵士たちの禁欲された生活に刺激を与えてくれるのは理解していた

気になる女の子のハンカチにドキドキするぐらいならまだしも、洗濯物というのはあまりにも生々し過ぎた

それでもジミーたちの興奮する勢いを考えてるとナオトは思わずプフッと笑ってしまった

「すまない、お取り込み中だったか?」

ウワッと振り返ると足でゴンゴンドアを蹴っているシンシアが蔑んだ目で立っていた…

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