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浮遊空母~ぼくの冷たい翼~

第29章 インド編③アニーカ・カリード 〜闇と孤独〜

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食堂でアニーカたちの話しを聞きながらソニアとタオは朝食を摂っていた



宇宙世紀、宇宙への開拓が始まり、ジオンの独立戦争が終わって、ティターンズ、アクシズの暗躍が過去の時代になっていても



インドの辺境ではいまだに古い慣習が日常生活に根付いているようだ



    男尊女卑

上位カーストからの残虐な事件



    街中でのレイプ

    公共バスの中でのリンチ



それらが混沌と日常の中に垣間見える世界


アニーカ・カリードの言葉は淡々と紡がれる


「成人女性へのレイプだけでなく、幼女やなんなら赤ん坊へのレイプ、またお婆さんへのレイプもしょっちゅう有ります



それらは見ず知らずの男たちの場合もありますし、同じ町や村の知り合い同士の事件も多くあります、また身内からの虐待の末レイプに至る場合もよくあります



それに上位カーストからの無差別な暴力は日常茶飯事で公表されることは少ないのです」



「それは……反発されないものなの? 警察に行ったり、訴えたりしないの?」



タオは別世界の現実が受け入れがたい


「理由は様々なのです

 被害を受ける多くは“ダリット”と言われる階層です

 既に廃止された“カースト制度”からも外されたさらに下の層になります


 “ダリット”は土地も持てず、資産も無く、何なら家屋を持てない場合もあります


 “ダリット”は上位カーストから仕事をもらって、上位カーストの土地を借りて仕事に就き、上位カーストから家を借りて暮らしています


 つまり反発すると苦しむのは自分たちに返ってきてしまうのです…


  そして…


  私も、その“ダリット”の出自です」


アニーカ・カリードは無表情に語っていた…


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