浮遊空母~ぼくの冷たい翼~
第29章 インド編③アニーカ・カリード 〜闇と孤独〜
(12)
その日の夜
アニーカ・カリードは昔の夢を見た
皆に昔の話ししたから、悪夢が鮮明に記憶の中から引きずり出されてきたのだろうか
アニーカ・カリードは小さい頃、決して裕福な暮らしではなかった
何人かいる姉妹たちが夜にトイレに誘った
貧しい〈ダリット〉たちが暮らす家屋にはトイレなどはなかったので2キロも離れた夜道を歩いて街から離れた山林の繁みまで出歩かなければ用をたせなかった
その日の晩、アニーカは眠気に負けてしまい姉と妹のトイレの誘いを断った
目が覚めたのは家族の騒いでいる声だった
姉と妹が戻ってこない
明け方
2人の小さな身体は山林の木の枝に遺体となって吊るされていたのが見つかった
2人ともレイプされ、身体中暴力を受けたであろう跡だらけだった
犯人はすぐ近くに住む同じ集落の男たち数名だった
ふだん挨拶も交わす顔見知りの男たちだが、ダリットよりも上位カーストだったらしく逮捕はされたものの、しばらくすると街に戻って普通の暮らしをしていた
アニーカ・カリードは理不尽さに怒りを覚えたが両親は何も出来なかった
しばらくして男たちは逮捕された腹いせに街なかで彼女の父親をリンチしてみせた
彼女の父親は彼らの親から仕事をもらっていた
アニーカ・カリードはこのとき、逆らってはいけない、感情を高ぶってはいけないと無意識に刷り込まさせられた
あの日の夜、自分もトイレの誘いを受けていれば
吊るされていたのは自分だったかもしれない……
幼い頃のアニーカ・カリードはそうやって反逆の感情を失っていったのだった…
その日の夜
アニーカ・カリードは昔の夢を見た
皆に昔の話ししたから、悪夢が鮮明に記憶の中から引きずり出されてきたのだろうか
アニーカ・カリードは小さい頃、決して裕福な暮らしではなかった
何人かいる姉妹たちが夜にトイレに誘った
貧しい〈ダリット〉たちが暮らす家屋にはトイレなどはなかったので2キロも離れた夜道を歩いて街から離れた山林の繁みまで出歩かなければ用をたせなかった
その日の晩、アニーカは眠気に負けてしまい姉と妹のトイレの誘いを断った
目が覚めたのは家族の騒いでいる声だった
姉と妹が戻ってこない
明け方
2人の小さな身体は山林の木の枝に遺体となって吊るされていたのが見つかった
2人ともレイプされ、身体中暴力を受けたであろう跡だらけだった
犯人はすぐ近くに住む同じ集落の男たち数名だった
ふだん挨拶も交わす顔見知りの男たちだが、ダリットよりも上位カーストだったらしく逮捕はされたものの、しばらくすると街に戻って普通の暮らしをしていた
アニーカ・カリードは理不尽さに怒りを覚えたが両親は何も出来なかった
しばらくして男たちは逮捕された腹いせに街なかで彼女の父親をリンチしてみせた
彼女の父親は彼らの親から仕事をもらっていた
アニーカ・カリードはこのとき、逆らってはいけない、感情を高ぶってはいけないと無意識に刷り込まさせられた
あの日の夜、自分もトイレの誘いを受けていれば
吊るされていたのは自分だったかもしれない……
幼い頃のアニーカ・カリードはそうやって反逆の感情を失っていったのだった…