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浮遊空母~ぼくの冷たい翼~

第29章 インド編③アニーカ・カリード 〜闇と孤独〜

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アニーカ・カリードは自分の考え方が破綻していることに気づいていた


過去の古い慣習にとらわれたイスラム原理主義、はたまたカーストを根強く残すヒンドゥーを憎み、離れ、拒絶してきたのに


自分は自分で他者を排除しようとしてしまう


連邦空軍の雰囲気はたしかにひとつの家族のようなチームで、ある意味理想的であったが


自分はそれには馴染めないのだ…


ナフト軍は自分たちの考え方を信じ、広めようとしている


アブドゥラ解放軍はそれらから反発した団体だ


連邦空軍は民主的に世界を管理、統制しようとしているし、


敵対する企業連合軍トランキュリティは民主的を突き詰めた結果、それぞれの利益を追求して連邦の統制から離れている



なにが正しくて

誰が間違っているのか



アニーカ・カリードは過去の凄惨なトラウマのせいで、何事に関しても自分の闇の部分が押し寄せてくる


故郷に自分の居場所は無かった


軍隊にも平穏は無かった


連邦空軍にも深く馴染めることはないだろう



ラルフに特別悪い印象があったわけではない

ましてや最初からいろいろ面倒見てもらっていたぐらいだ


それでも彼と近づきたい感情などまったく無い



やはり、ここに長居すべきではないのかもしれない…


シャワールームで頭から熱い湯を浴びる


〈わたしは何なんだッ!? 何がしたいんだ?〉


アニーカ・カリードは己のアイデンティティを失いそうな感覚に落ちていった……


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