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浮遊空母~ぼくの冷たい翼~

第31章 インド編⑤終幕

(3)

最後の夜、彼はファラに「今まで済まなかった」と謝った


上位カーストの彼からそのような言葉を聞くとは思えなかったのでファラは驚いた


街の有権者の息子として気ままに生きてきたが、大人になるにつれて不自由なギャップが生じてき、さらに親の稼業がおもわしくないのを知ってからは真面目に働いていた


嫁とはうまく行っていないようで、男性家長の強いインドだが、嫁の実家のほうが大きいらしく家でも不自由さがあったらしい


ファラのことは玩具のように扱ってきたが、柔順な部分が気に入っていたようだ


下位カーストのことは今まで蔑んできて育ったが、今ではたくさんのダリットたちを生活させている責任があると思い始めたのはファラの存在だったと告白した


「それに何より、お前は本当に美しい」


ファラの中ではセックスとは男が一方的に求めてくる快楽だと思いこんでいたが、最後のセックスは情愛に満ちたセックスとなった


こうして彼との最後の夜はファラにとっても特別な夜となった…



彼の計らいにより地元に駐留している軍幹部の住み込みの家政婦として幼い赤子を連れての新生活が始まった


幹部の男はファラの親よりも高齢で独り身だった


都会の出身とあってダリットの階層にあまり強い偏見を持っていなかったのでファラは安心した


娘のように可愛がってもらえた




彼の自宅には軍の関係者が何人も訪れる人の出入りが激しいところであった


ある日部下の男が主の留守中にやってきて、強引にセックスを求めてきた


抵抗するファラ


ちょうどそのとき他の人間が訪問し、事件は未遂に終わった


幹部は慌てて帰宅し、ファラに謝罪した


そして部下にはもうここに近づけさせないことを約束した


ファラは感謝したものの、自分は感謝されるような立場では無いと告げたが、幹部の男は


「私は家族のように思っているよ」

と優しい言葉をくれた


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