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浮遊空母~ぼくの冷たい翼~

第33章 スペースコロニー

(7)

ナオトは生まれて初めて馬車に乗った


「本物の馬だよね?」

「当たり前じゃない!大気汚染も生まないし、排泄物は栽培コロニーでの肥料になるのよ」

馬車から外を眺めていると湖のそばを街路樹が並んでいる


「湖も街路樹も人間が作り込んだものなんだろうけど、やっぱり雑草ってコロニーの中でも有るんだね」


「そうね、そんなことに気付くなんてアースノイドらしいわ」


「雨も人工的にコントロールされてるんだろう?それでも草刈りとかするんだろうな…」


「日本の故郷を思い出しているの?地球に戻ったらアナタが育った村も見てみたいわ」


「村に住んでたなんて言ってたっけ?」


ナオトは意識が混濁していたとき、シンシアの心と繋がっていた記憶を残していない


馬車は大きくて立派なホテルに着いた

レンガ作りで重厚な佇まい

どう見ても庶民が泊まれるようなクラスでは無かった


ナオトは眼を見張る


「ま、まさか…、今夜ここに?」


「ハネムーンですから」


「……うそだろ?」


「バレた? そっちじゃなくてこっちよ!」




シンシアはナオトの手を引っ張りホテルの裏口に回る


ホテルの周りは小高い丘になっていて芝生、林、草原が広がっていた


ナオトは地球でもこんな高級感ある施設に入ったこともなかった


建物の裏手からまた丘を登って、少し離れたところに牧場があった


手作りの柵が並んでいる


その向こうにはたくさんの馬たちが放牧されていた


建物の玄関には行かず、馬の厩舎のほうへまわる


中では数名のスタッフが厩舎の掃除をしていた


「エリー?」

シンシアはひとりの主婦らしき小太りな女性に声をかけた


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