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浮遊空母~ぼくの冷たい翼~

第34章 25バンチの亡霊

(7)

ふたりは衣服を洗い、枝に干し、食べられそうな木の実を探した


水浴びした滝でもいくつか魚影があったがさすがに釣りまでは出来そうもない


ナオトは浅瀬に石をいくつか並べていって川幅を狭めていった


木を何本も使ってビーバーか作るようなダムを作ってみる

枝が複雑に絡み合い、網の代わりになるかもしれない


二人で滝の方から追い込んでみると、魚たちは慌てて下流へ逃げる


逃げた先は川幅が狭くなり、枝が絡む迷路に迷い込んでいく


すかさずナオトは掬いあげ、岸へ放り投げた


「キミ、すっかりサバイバル生活に溶け込んでるじゃないか」


「ボクは田舎の山育ちなんですよ」


岩をめくってみると沢蟹も捕まえることが出来た


火を起こす道具は有るものの、煙を上げることをためらったが、空腹には勝てなかった


念の為、滝の近くに焚き火をして、水の勢いで少しでも煙が分散するようにしてみたが、どうしても隠しきれなかった


ニジマス、沢蟹、木の実の晩餐


しかもガム以外を口にするのは久しぶりだ


「あんなに暑かったのに、日が暮れると寒いな」

「まだ服も乾きませんね……、先に干してから水浴びすれば良かった
 いや、焚き火を滝の近くにし過ぎました
 水しぶきで乾きにくいんですよ」

「考えても仕方ない、それにあの時は暑さの限界だったんだ
 あとで焚き火の場所を変えよう、今更煙を気にしても仕方がない」

食後にコーヒーでも呑みたいぐらいだがキャンプに来ているわけでもなく、火にくべる鍋もコップも無い

葉を茹でたら、お茶の代わりになるのだろうか


ナオトは帰還出来たらアウトドアやサバイバルの知識を増やしておこうと思った


「でも川が有って良かった、何もかも生き返った」

「サバイバル訓練が何回もあって教官も大変ですね」

「こんな訓練は無い!我々は本当に孤立してるんだ」

「え?」

「ここは訓練校の区画じゃない、森林で区切られていたはずだ、私も森林から奥は来たことがない、それにさすがにここまで来たら援助は来るぞ?こちら側は管轄区域外だな」


ナオトは呆然とした……


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