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浮遊空母~ぼくの冷たい翼~

第34章 25バンチの亡霊

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「上を見てごらん」

「え?」

複座シートを下から見上げる
肌着と下着だけのシモンズ教官の姿

まるで就寝前のような格好だ


「……バカ! 私じゃない、宇宙空間だ」


ディスプレイの表示画面を切り替え、望遠拡大させる


「……艦隊? 何隻も……連邦軍じゃ無さそうですね」


「赤い戦艦……2隻は〈ムサカ〉、真ん中の旗艦は何だろう? 見たことは無いが〈レウルーラ〉とか言うヤツか?」


「どこへ向かっているんでしょう?
 ジオンの船がこんなところに」


「ザビ家のネオ・ジオンの崩壊後、ダイクン派が息まいているからな…
 それに連邦政府に反感を持つ者は多いんだよ
 難民政策がうまくいってないからね…

 あの方向ならスウィートウォーターだな」


「何が有るんです?」


「崩壊しかかっていた2つのコロニーを無理やり結合させたコロニーだよ
 通常の2倍くらいの長さになっている
 太いシリンダーが開放型コロニー、細いシリンダーが密閉型コロニーだ
 難民政策で無理やり容れ物を作って、そこ強引に難民たちを押し込んでいるんだ
 人工重力はいびつだし、電力も不安定
 連邦政府への反感が一番強いコロニーだ
 あそこならジオンも受け入れられやすいだろうな」


「戦争が始まるのですか?」

「ここの訓練コロニーがガラ空きだろ?
 連邦軍はロンデニオンや月に警戒配備させているんじゃないか?
 ジオンの2回目の復讐戦が始まるのかもな

 さぁ、我々も戻ろう!
 この帰還経路でキミも無重力活動に随分慣れたじゃないか」


「シモンズ教官のおかげです、〈海ヘビ〉に近づくたびに操縦を代わってもらったので良い勉強になりました」

「でもキミはモビルスーツに向いて無いと思うよ、早死にしそうだ!」


「はい、やっぱり航空機乗りにロボットはムリそうです」


ようやくドッキングベイへ辿り着き、訓練校のコントロールセンターへ帰還した


再会したマーク教官から、どうやってコロニーの外から回って来れたのか質問攻めにあった……


結局数日間の25バンチでのサバイバル訓練は20人中「合格者なし」という結果で終わった

4人は小型のシャトルでロンデニオン・コロニーへ戻る

そこでスウィートウォーターがネオ・ジオンに制圧されたニュースを聞いたのだった……


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