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浮遊空母~ぼくの冷たい翼~

第7章 ~オーガスタ研究所~

それにヤンには複雑な感情が入り乱れていた

自分の故郷を日本人に汚されたような感覚

中華思想がこの宇宙時代にそぐわないのは理解しているが、理屈ではない

中国は親であり、日本は子であるという教育を受けてきた

子である日本が最新のテクノロジーを駆使し、ニューホンコンの街を焼き払ったのはやはり気に入らない

さらに明日からのナオトの捜索だ

なんで俺が日本人を助けなければいけないのだ!


ヤンは目の前のゴージャスなアメリカ人の身体を楽しむより、明日から始まる仕事の苛立ちに支配されていた

ヤンはアンジェラの腕をつかむと強引に後ろ手をとり背後にまわった

アンジェラはいつも消極的なセックスをするヤンが突然強引な行動を始めたことに驚いた

後ろから強引に突かれる!

激しいファックにアンジェラは翻弄された

“あうう・・・こんなに・・・・こんなに生命力に溢れてるヤンなのに・・・・かわいそうなヤン・・・”


アンジェラの得意とする“勘”はヤンの未来が見えないことを悲しんだ


貫かれる快楽のなかでアンジェラは自身の不吉な予感で涙が止まらない


見えない未来・・・それは消失を意味しているのだろう

超能力者ではないのだ


北米での研究所でもたびたび起こる「喪失感」
さまざまな実験、繰り返される実験、仲間は減っては増え、同様に職員も減っては増える
すぐ近くで行われているのは戦争なのだ

自分たち自身が戦場へ赴かなくとも、この毎日繰り返される作業は戦争するためのものなのだ

感覚が研ぎ澄まされ、イヤな予感は的中率を高めていく

本当にこのような研究が必要なのだろうか

この身体中に取り付けられた何本ものコードは何に繋がっているのか

まるで自分自身が機械になってしまうのではないのか

この研究所自体が巨大な兵器も同然なのだ

消えていった仲間たち

彼らは兵器としてこの世を去ってしまったのだろうか

ならばこの私に本当に必要なことなのか

何のために余計な苦しみを味わってしまっているのか

この黒い未来は何なのだろう

仲間の見えない未来を見るたびに、またひとりぼっちになってしまいそうだ

せめて、せめて誰かに触れていたい

肌と肌を密着させて、誰かと同じ空間に留まりたい

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