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浮遊空母~ぼくの冷たい翼~

第35章 秘密警察の「人狩り」

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あれから数日、〈修練場〉の後片付けも終わり建物の補強工事を手伝いながら、ソニアとノマは精神統一の鍛錬を続けていた


〈修練場〉ではいたるところで様々なグループがそれぞれ小さな塊となってヨガをしたり、座禅をしたりしている

ソニアたちは元修道尼の中年の女性を指導者としたグループに加わり極意を学んでいた


宇宙の真理や曼陀羅の世界観はよくわからなかったが、気持ちを落ち着けて感情を抑えて、脳内にイメージだけを作り上げていく工程はなんとなく理解できた


ノマが〈サイコミュ〉の練習でよく言う“イメージを作る”という考えが似ていたのでこのグループを選んだのだ


しかし、まわりの生徒たちのほとんどは宇宙移民〈スペースノイド〉でスピリチュアル体験ツアーのような軽薄な考えの若者ばかりだった


訓練が終わればキャッキャ、キャッキャと浮かれて湖で遊び呆けては、夜に焚き火を中心にフリーセックスを始めている


ゆうべの余韻が醒めない連中は庭の木陰でセックスを楽しんでいたりと、堕落した楽園のようだった


自由きままに暮らす彼らには連邦軍やジオン、ティターンズにエウーゴ、カラバなどの勢力争いには何も無関心だ


ときおり街へ買い出しに出かけては〈マンハンター〉に付け狙われたりはするが、若者からすればちょっとウザい生活指導の教師に補導されら程度にしか思っていなかった


もちろんソニアとノマも宇宙の辺境コロニーに送還され強制労働させられた経験は無いものの、戦争の過酷さや、古い慣習、はたまた残酷な暴力の世界を知っているだけに、若いスペースノイドたちの浅い考え方に共感出来なかった


指導してくれる元修道尼もここでの収益で暮らしているので、厳しい修行を課すこともなかった


ここは観光客めあての体験スポットでしかなかったのだ


それから何度か〈マンハンター〉との小競り合いがあったものの、うまく逃げおおせたり、運が良ければ先日のように〈マグリッド軍〉の部隊が追い払ってくれたりしていた


ソニアとノマはほどなくして〈修練場〉をあとにした……



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