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浮遊空母~ぼくの冷たい翼~

第8章 ~キアラ~

ナオトは激しい痛みで目が覚めた

意識を取り戻した瞬間、頭痛と吐き気、そして身体が引きちぎられるかのような感覚に襲われた

しかし、後ろ手に縛られていたときより少し冷静だ

つらい体調ではあるがあの時よりは幾段もましだ

あらためて周囲を見渡すとどうやら病室のようだ

捕虜になって何日過ぎたのだろう

数時間なのか、数日なのか、数週間なのか

苦しみがましになっているということはモルヒネを射たれているか、もしくはかなりの時間が経ってしまっているか

どうしてこんなところに居るんだったっけ

そういえば訓練はどうなったんだ

訓練?



そうかコントロールが効かなくなって・・・・墜落か・・・・・マズイな、機体を見られたか・・・・くそっ!ここに居てても尋問か拷問されるだけだな


痛みに耐えながらゆっくりと右腕を上げてみる

左肩をずらしていき、ゆっくり上半身を起こしていく

身体が土のように重たい


くそっ!こんなんでこの施設から脱出できるのか


額に脂汗を出しながらナオトは苦渋の表情になっていった


ふと見渡すとドアの窓枠から誰かがこちらを見ている

子供だ

現地の少女か

浅黒い肌、大きな眼、黒い髪は後ろでくくってあるようだ

不安げに見ていた女の子だったがナオトが愛想笑いをしてやるとニコッと笑顔を見せた

子供か、ティーンエイジャーか、ナオトから見て外国人の年齢は判別しにくかった


情報が、欲しい

少女に明るく話しかけたかったが、あまりの身体の苦しみに息が止まりそうになる

一言目に口を開いた瞬間、ナオトは支えていた腕を崩しベッドから激しく落下してしまった

肩を強打したものの、声が出ない

心臓がとまったかのような感覚

あまりの激痛に口は叫び声を上げているつもりだが、まったく声が出なかった

眼球がひっくりかえる

白目を剥いているのがナオト自身でもわかったが、元に戻そうとコントロールできない


時間をかけハァハァと呼吸を整えているとき、ようやく誰かが隣で支えてくれていることに気がついた

落ち着いてくるとそれがさっきの少女だと気がついた


「大丈夫?」

ナオトは無言で頷いた

口のなかが乾ききっていて、すぐに声が出せない
ヒューヒュー息を吐きながらゆっくりと話そうとしてみた

「こ、ここ・・・・どこ・・・・?」

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