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浮遊空母~ぼくの冷たい翼~

第8章 ~キアラ~

「え?病院だけど・・・・」

「・・・・どこの?」

「バリックパパンの・・・・」

「・・・・バリックパパン・・・?」

聞きなれない地名だ

「・・・・カリマンタンのバリックパパンよ!あなたニッポンジン?チャイニーズ?」

「日本人だよ、カリマンタン・・・インドネシアか、そんなに南下してたのか」


カリマンタン島は南国インドネシアのなかでも珍しい一大工業地帯だ
軍の工場も、基地もあったはずだ
ここが連邦軍の基地だったらまだ良いが、機体はマズイな

パイロットスーツに貼り付けられた認識票で検索されてもおそらくは以前の南太平洋ガード基地の所属と出るだけだろう
管轄は違うがいくらでも言い訳が出来る

しかし実験機のフリューゲルは詳細を求められるだろう


少し戸惑っているナオトの様子を見ながら少女は興味深そうに顔を覗きこんできた


「あなた漁師?軍人?・・・・・私のひいひいお爺さんは日本人だったのよ~」


昔の大戦では確かに日本兵が駐屯してたな・・・それで話しかけてきたのか?


「私の名前はキアラ!」

「ボクはナオトだよ、キアラ悪いんだけど近くに車イスはあるかい?」

キアラという名を呼ばれてパァーと笑顔になると、彼女は新しい冒険が始まったかのよーにウキウキと部屋を飛び出していった

「子どもが居るって・・・ここは小児科か?なんでボクまでここに・・・?」

考えるまでもなく少女はガラガラと古い車イスを持ってきた・・・・


その頃ヤンと別れたシンシアは3件目の病院に訪れていた

確信は無いが、狙いはつけてある

墜落してパイロットが生存していた場合、連邦軍直轄の病院に運ばれるだろう

インドネシアの島々にはそれなりの基地が点在しているが、“あの機体”を調査するとなったら大型の施設、工場が必要だろう

ナオトはおそらくその施設に隣接した軍の病院に隔離されているハズだ

受付では目だってしまう

あくまで船の事故に遭った身内を探している一般人を装っていたいが、大人数のナースセンターは危険だと思った

スパイはどこに潜んでいるかんからない

女性は特に紛れ込んでいても判別しにくいのだ

廊下を歩いていた白衣の女性に声をかけてみた

「エクスキューズミー、数日前・・・クラスメイトがボートから落ちて病院に運ばれたそうなんですがこちらにお世話になっていませんか?」

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